漫才作家・中田明成

5000本の漫才台本を書いた作家、中田明成のウェブサイトです。

コメディNo.1「こんな名前はいかがです」

前田:滋賀県の豊郷町へ参りました
坂田:いい町ですね
ま:町もええけど、豊郷という町の名前もよろしいね
さ:ほんまやね、豊郷の豊は、ゆかたと書きまんねん
ま:ゆかたと違ごて、ゆたかや!
さ:郷はごうと書きまんねん
ま:郷ひろみのごうですわ
さ:なんやと?
ま:郷ひろみのごう
さ:わしとそっくりさんの名前を、呼び捨てにすな!
ま:……お前のどこが郷ひろみにそっくりやねん。ゴミ捨て場みたいな顔して
さ:ゴミ捨て場て!
ま:この男が楽屋で寝てまっしゃろ、顔にようハエがたかりまんねん。そのハエが顔にとまったら、皮膚から出るネバネバで、ハエがくっついて逃げられまへんねん
さ:わしの顔はハエ取り紙か!
ま:まぁしかし、豊郷町に限らず、町の名前というのは、「ああでもない、こうでもない」といろいろ苦心の末付けられたんやろね
さ:そうでもないの違うか。町の名前なんか、単純に付けられまんねん
ま:単純と言うと?
さ:例えば、京都なんか、昔は京の都と言われてたのを、”の”を取り除いて京都になったんやからね
ま:単純やねぇ、ほな大阪はどうやってつけられたんや
さ:名前を付ける役の人が「なにわの町を何という名前にしよかな」と考えながら歩いてる時に、前から女装をした男がやって来たんや
ま:女装をした男が?
さ:それを見て「なんや、女や思たら、おっさんか」と思た瞬間、そやこの町の名前、おっさんかにしよと思たんや
ま:おっさんか!?
さ:そのおっさんかをいろいろ手直しして、最後は大阪になったんや
ま:ほんまかいな!ほな、滋賀県の大津はどうやって付けられたんや?
さ:名前を付ける役の人が、「風呂でも入りながら考えよか」と、湯の中へ足を入れたとたん、湯が無茶苦茶に熱かったから叫んだんや
ま:どう?
さ:オッツー!、オー、ツー!……そこで「そや、オーツにしよ」と思いついたんや
ま:……町の名前の付けられ片て、ほんま単純やな
さ:日本だけと違ごて、外国の町の名前でも単純ですよ
ま:外国の名前と言うと?
さ:例えば、ドイツの首都なんかでも、名前を付ける役の人が、考えてる時に、電話のベルがリンと鳴ったんや、その時に「そや、ベルリンにしよ」と考え付いたんや
ま:……ベルリンて、そういういきさつで付いたんかいな
さ:中国の首都でもよう似たもんや
ま:中国の首都
さ:名前を付ける役の人が、鉛筆で「ああでもないこうでもない」と、いろんな名前を紙に書いてる時に、鉛筆の芯が折れたんや
ま:鉛筆の芯が折れた?
さ:ペキンとな……その時に「そや、ペキンにしよ」と決めたんや
ま:ほんまかいな!ほな、イギリスの首都のロンドンは、どうやって付けられたんや?
さ:これは一般募集ですよ
ま:一般募集?
さ:イギリスの首都の名前は何が良いかを一般募集したんや
ま:なるほど
さ:ほな「こんな名前はどうか」というハガキが、ロンドンと集ったんや、ロンドンと。ロンドンと集ったんを見て、責任者が「そや、ロンドンにしよ」と決めたんや
ま:……デンマークの首都はどうして付けられたかわかりました
さ:デンマークの首都?
ま:名前を付ける人が、君と同じような頭をしてましたんや
さ:豊かな髪の毛をしとったんやな
ま:正反対や!……その人が自分の顔を鏡で見た途端、思いついたんや、「そや、コペンハーゲンにしよ」と
さ:……なかなか勉強してますねぇ
ま:……ただ思い付きを言うただけやけどな
さ:町の名前だけと違ごて、物の名前でも、単純に付けられてるんですよ
ま:物の名前言うと?
さ:例えば、魚の名前でも、付けられた理由は単純ですからね
ま:魚の名前ね
さ:例えばアジなんか、「この魚ええ味してるやないか、ほな名前アジにしよか」やで
ま:単純やなぁ
さ:ニシンなんかでも「おい、この魚の腹の中、カズノコが入ってるで、ということはニンシンしてたんやな、ほなこの魚の名前ニシンにしよか」てなもんや
ま:ほな聞くけど、イワシはどういう理由でイワシと付いたんや?
さ:「おい、この魚キラキラと輝いてきれいやな、女優で言うたら、岩下志麻みたいやないか、ほな名前イワシにしよか」や
ま:……サヨリは?
さ:「この魚もキラキラと奇麗やな、女優で言うたら吉永サヨリやな、ほなサヨリにしよか」や
ま:吉永”サユリ”やろ!
さ:とにかく単純
ま:ほな、オコゼの名前が付いた理由は何や?
さ:「おい、この魚、ブサイクな魚やのう、前田五郎の嫁はんの顔みたいな魚やないか」「そんなこと言うたら、前田五郎おこっぜ」「ほなこの魚の名前、おこぜにしよか」こうや
ま:……そこまで言われたらわしも言うたるわ、昔、ブサイクな汚い魚がおったんや、その時に「なんやこのヌルヌルした汚い魚、坂田利夫にそっくりやないか、アホの坂田にそっくりとは気の毒な魚やのう、”ドウジョウ”するで、そや、この魚の名前ドジョウにしよ」とこうなったんや、ハッハッハッハッ、な
さ:……君、勉強してますねぇ
ま:怒らんのかい!
さ:いろいろと、名前の話が出ましたが、実を言うと、私の先祖と言うのは代々、名前を付ける役職に就いておりましてね
ま:代々というと、いつの時代から名前を付ける役職やったんや?
さ:平安時代の、坂田金時の時代からやないか
ま:えっ、あの坂田金時て、君の先祖やったんかいな?
さ:そうや、坂田金時と言えば、赤い色した豆を、金時豆と名付けたんで有名やろ
ま:それは知らんけど、源頼光の家来の四天王の一人として、大江山の鬼退治をしたんで有名やないか
さ:鬼退治をしましたよ
ま:先祖が鬼退治をしてるのに、なんで子孫の君が、ゴキブリ退治も出来へんのや?
さ:ほっとけ!
ま:坂田金時と言えば、子供の頃は金太郎と呼ばれて、足柄山で熊と相撲をとっていた人やで
さ:そやからうちには、金太郎の股掛けが、家宝として残ってるがな
ま:金太郎の股掛けいうと、大きな丸が書かれて、丸の中にアホと書かれてるやつやで
さ:金と書かれてるんや!アホて書く訳無いやろ
ま:しかしようそんな、平安時代の股掛けが残ってたなぁ
さ:そら、絹とか木綿の股掛けやったら、虫に食われて、とっくに跡形も無くなっとるわい
ま:ほな、その股掛け、何で出来とるんや?
さ:ポリエステル100パーセント
ま:アホな!平安時代にポリエステルとか有る訳ないやろ
さ:うちの先祖は、坂田金時以来、代々京都に住んで、名前を付ける役職に就いてきた訳や
ま:そういう立派な先祖とは知りませんでした。おみそれしました
さ:そやから、京都のお寺の名前は、殆ど私の先祖が付けましたからね
ま:京都のお寺の名前をかいな
さ:あるお寺から、名前を付けてくれと頼まれた先祖は、トイレの中で一生懸命考えたんや
ま:トイレの中でかい
さ:うちは先祖代々、物を考える時はトイレの中や
ま:それで、先祖がトイレの中で考えたお寺の名前は?
さ:キンカクシ
ま:金閣寺やろ!
さ:ものすごくたくさんのお金を出されて「うちの寺の名前を付けてくれ」と頼まれたこともありまして
ま:そんなにお金をもろたら、えらい得やなぁ
さ:そら得ですよ、先祖大喜びや
ま:……付けた名前は?
さ:大徳寺
ま:……今日の漫才シャレが多いなぁ!
さ:京都の大奥にある寺から、三千円だすから、名前を付けてくれと頼まれたこともあるねん
ま:三千円て安いなぁ
さ:で、付けた名前が
ま:三千院やろ
さ:先に言うな!
ま:そんなん誰にでもわかるやないか
さ:先祖は違う寺からも、名前を付けてくれと頼まれて、その寺を見に行った時にコケたんや、そして付けた名前が
ま:苔寺やろ
さ:先に言うな言うてるやろ!
ま:先に言われた無かったら、悟られんように持っていけ
さ:先祖は別の寺からも名前を付けてくれと頼まれてね、その寺というのは、近くに清い水が流れてたんや
ま:……清い水。付けた寺の名前わかるけど、黙ってたろ
さ:付けた名前が知恩院や
ま:……清水寺と違うんかい!ほな、清い水の意味はなんやったんや!?
さ:意味なんかあるかい、悟られんように持って行っただけじゃ
ま:アホな!……君がそういう由緒ある家業の人間なら、一つ頼みたいことがあるんですよ
さ:頼みたいことと言うと?
ま:実は先日、うちの息子に男の子が産まれたんや
さ:息子の子ということは、君の話やないか
ま:そう、初孫でして
さ:なに
ま:ウイマゴやと言うてるねん
さ:酒に酔うて産まれて来たんか?
ま:そうやなくて、ウイマゴと言うのは初めての孫のことや
さ:可愛いやろ
ま:可愛いねぇ、その孫の名前を私に付けてくれと、息子から頼まれたんやけど、なかなかこれという名前が見つからん、そこで君に名前を付けてもらいたい訳や
さ:任せてください、うちは代々名前を付ける専門家ですからね
ま:孫の名前、どんな名前がええやろ?
さ:君の名前の五郎をもろて、前田五郎兵衛いうのはどうや
ま:……そんな名前、孫が可哀相やろ
さ:君は将来孫にどんな人になってもらいたいのや?
ま:出来る事なら、ハンカチ王子のような、甲子園で活躍できる野球選手になってもらいたいね
さ:ほなハンカチ王子の斎藤佑樹の佑樹をもろて、前田祐樹というのはどや
ま:前田祐樹ねぇ、ちょっと物足らんわ
さ:ほな、斎藤ももろて、前田斎藤佑樹いうのはどうや
ま:そこまではいらんねん!実は息子は孫をプロゴルファーにしたがっとんねや
さ:前田タイガーウッズはどうや
ま:前田タイガーウッズ!?
さ:前田ハニカミ王子にするか?
ま:……真面目に考えとんのかい?
さ:真面目に考えてますよ、名前の良い悪いで、その人の人生が変わるんですからね
ま:ほな、君の坂田利夫いう名前も変えて、君のみすぼらしい人生も変えたらどうや
さ:ええこと言うてくれたなぁ、私、明日から名前変えますわ
ま:何という名前に変えるの?
さ:坂田とよさと
ま:豊郷町へのベンチャラが丸見えやないか
さ:坂田もこみちはどうやろ
ま:坂田もこみち?
さ:速水もこみちはイケメンで有名やろ?私もイケメンにあやかって、もこみちを貰うねん
ま:しかし、君はどう見てもイケメンというよりは、ツケメンという顔やからなぁ
さ:ツケメンてどんな顔やねん!
ま:わかった。もこみちの一部をもろた、君らしい名前がある
さ:もこみちの一部をもらうの?
ま:よし、君は明日からはこの名前や
さ:明日からの私の名前は?
ま:坂田でこぼこみち
さ:もうええわ!

 

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