漫才作家・中田明成

5000本の漫才台本を書いた作家、中田明成のウェブサイトです。

しましまんず「世の中臨機応変に」

池山:しましまんずと申しまして、まだ若手ですが、最近は難波の劇場にも出してもろてまして
藤井:昨日なんか、その劇場でお客さんが大爆笑ですよ……大助・花子さんが出はった時
い:……我々が大爆笑とらないかんねん!
ふ:でも、ベテランの漫才の方と我々とでは、笑ろてくれはる客層に違いがありましてね
い:あるある、ベテランの方の時は、劇場へきてる比較的年齢層の高い客がよく笑いますね
ふ:我々が出た時は、劇場へきてる比較的親せきがよく笑いますね
い:親せきしか笑ろてくれへんのか!他人を笑わさないかんねん
ふ:他人は無理やで、親せきでもイヤイヤ笑ろてるのに
い:そこを努力して、皆さんに腹をかかえて「もうたまらん」言うぐらいに笑ろてもらうようにならないかんねや
ふ:昨日、僕が舞台で喋った時、腹をかかえて「もうたまらん」言うて
い:どんな客が?
ふ:妊婦が
い:……それは、産まれそうになったから、腹をかかえて出て行ったんや
ふ:でも我々、結構、若い人のファンは多いんですよ
い:そやから、この前も大学の学園祭に呼んでもらいました
ふ:大学へ行きました
い:講堂で漫才をしたんですが、今日の2倍ぐらいの人数の客が入ってくれました
ふ:でも、お客さんとしては、人数は半分でも今日の方がずっと上ですわ
い:ずっと上?
ふ:年令の合計が
い:笑いの質の方はどうやねん!?
ふ:大学で漫才した時は、ちょっと面白いこと言うただけで「ドドドーッ!」でしたねぇ
い:迫力ある笑いやったねぇ
ふ:「ドドドーッ!」言うても、それぞれ個人が「ドドドーッ!」言うて笑うの違うんですよ
い:当たり前やないか!「ドドドーッ!」言うて笑う個人がおったら、気色悪いがな
ふ:「あっ、ズボンのケツ破れたまま歩いてる奴おるぞ、見てみ見てみ(と指さす)」
い:「ほんま面白いなぁ」
二人:「「ドドドーッ!……ドドドーッ!」」
ふ:……ほんまに気色悪いなぁ
い:しかし、同じネタをやるにしても、若い人の前でやる時と、お年寄りの前でやる時とでは、喋り方とか演じ方というのを臨機応変に変えないかんね
ふ:これは大事なことですね
い:音楽ライブのネタをやる時でも、若い人の前でやる時と、お年寄りの前でやる時では、臨機応変に変えないかんしね
ふ:そら変えないかん
い:(恰好よく)みんな乗ってるかい!……これがお年寄りの前では
ふ:(ゆっくりとした喋りで)皆さん、お乗りになっていただいているでしょうか
い:観光バスに乗って温泉旅行に行くのやないねん
ふ:けど臨機応変にやらな、ライブなんか、お年寄りにはわからへんがな
い:(格好よく)みんな、今日は本当によく来てくれたね、それじゃ、ミーのヒットナンバーを行くぜ、♪ジャジャジャジャンジャーン!(唄う)♪
ふ:(ゆっくりとした喋りで)みなさん、ようこそお参りを
い:お参りをて!
ふ:それでは当寺院のヒットナンバーを参りましょう、チーン、ポクポクポクポク、ゴーン!
い:もうええちゅうねん、しかし、これからは臨機応変にやってみたいね
ふ:考えましたよ、我々にしかできん、特徴のある漫才を
い:ほー、どんな漫才や?
ふ:普通、漫才と言えば、二人が喋り合うものでしょう
い:二人が喋り合うて漫才や
ふ:その発想をころっと変えて、最初から最後まで、片方だけが喋り続ける漫才をやってみやへんか
い:ほなもう片方は何してるの?
ふ:横で寝てるねん
い:で、寝る役の方は?
ふ:わしやわしや
い:アホか!そんな漫才、こっちがしんどてやってられるかい
ふ:ほな、腹話術ふう漫才いうのはどうや
い:腹話術ふう漫才?
ふ:片方が腹話術師役をやって、片方が人形役をやるねん
い:面白そうやないか
ふ:腹話術師役が、人形の声と自分本人をやって、人形役は、口をパクパクさせとるねん
い:で、人形役は?
ふ:わしやわしや
い:やかましいわ!自分が楽なる方ばっかりやろとしてるやないか
ふ:お客さんからテーマをもろて、ぶっつけでそのテーマの漫才を、臨機応変にやるいうのはどうや
い:……その発想の新しさはわかるけど、ちょっと問題やねぇ
ふ:どこが問題やねん?
い:我々がぶっつけで漫才やって、お客さん笑わせられるか?
ふ:……?
い:三か月間、練りに練った漫才でも笑ろてもらう事少ないねんぞ、どう考えてもぶっつけではしんどいぞ
ふ:そんなことあるかい、我々はぶっつけに強い漫才師で通ってるやないかい
い:ぶっつけに強い?
ふ:この前、ガードレールに車ぶっつけても、二人とも生き残ってたやないか
い:ぶっつけの意味が違うねん
ふ:僕は自信ありますよ
い:そこまで君が言うのやったら、ぶっつけ漫才に、今から挑戦してみよやないか
ふ:みなさん、テーマを何かリクエストしていただけますか
い:そのテーマで、我々ぶっつけ漫才にちょうせんしてみます
ふ:どんなテーマでもいいですよ「男のファッション」でもええし「スポーツは楽し」でもええし
い:何かございませんか
ふ:何でもいいんですよ「男のファッション」でも「スポーツは楽し」でも
い:初めての試みの漫才ですが、一生懸命にやらせてもらいますよ
ふ:テーマおまへんか「男のファッション」でもええし「スポーツは楽し」でもええし
い:さっきからそればっかりやないか!……僕らの持ちネタに「男のファッション」と「スポーツは楽し」いうのがありまんねん……違うので言え違うので
ふ:何かテーマおまへんか「男性の着る物いろいろ」でもええし「運動はええなぁ」でもええし
い:内容は同じや!
ふ:何かリクエストございませんか
い:ございませんか
ふ:断っておきますが、リクエストされた方は、リクエスト料として八千円頂きますよ……リクエストございませんか……無いようですので、ぶっつけ漫才中止中止
い:やめるんかい!
ふ:人間、臨機応変に生きていかな
い:最初からやる気ないやないか!しかし、臨機応変と言えば、最近の日本の会社は、不景気を乗り切る為に、いろんなことを臨機応変にやってますねぇ
ふ:そらそやがな、今まで通りのことだけやってたんでは、会社がつぶれてしまうがな
い:うちの近所の会社なんか、木材会社でありながら、最近は健康食品に手出してますねん
ふ:うちの近所の会社なんか、鉄骨会社でありながら、最近は白骨に手を出してまんねん
い:白骨!?
ふ:鉄で出来た骨壺を作りだしたんや
い:……新入社員を採用する時でも、昔みたいなペーパーテストだけにこだわらずに、ユニークな採用試験をしてる会社も最近は増えてますよ
ふ:増えてるねぇ
い:社員は体力が必要や言うて、百メートル競走をさせる会社もあるんですよ
ふ:焼き芋を腹いっぱい食べさせて、一番沢山食べた者を採用した。いう会社もあったがな
い:何の会社や?
ふ:ガス会社
い:ほんまかいな!
ふ:足の先と頭の先を両方から引っ張って、一番身長が伸びた者を採用した会社もありますねん
い:ユニークな採用試験やなぁ、何の会社や?
ふ:ゴム会社
い:ゴムそのままやないか!
ふ:プールで潜らせて、一番長いこと潜ってた者を採用した会社もありまんねん
い:どんな会社や?
ふ:もぐりの会社
い:もぐり営業の会社が、社員を公に採用するんかいな!
ふ:自転車をこがして、一番長いことこいでた者を採用した会社もあるんです
い:自転車操業の会社やろ
ふ:なんでわかるの?
い:わかるわい!
(以降、コント風に)
い:君かね、我が社の採用試験を受けに来た藤井君いうのは
ふ:はい、よろしくお願いします
い:では、さっそく採用試験といこうか
ふ:はい!
い:ではまず、ベートーベンの「歓喜の歌」を唄ってみなさい
ふ:……なんでそんな歌を唄うんですか?
い:我が社の社員に向いてるかどうかを調べるんだよ
ふ:この会社は、プラスチックの会社でしょ
い:そうだよ
ふ:それがなんでベートーベンですか?
い:プラスチックだけではやっていけないから、クラシックに手を出そと思てるんだよ!
ふ:……大丈夫かいなこんな会社入って!
い:ベートーベンは駄目かね
ふ:申し訳ありません
い:それじゃ、うさぎ跳びをやってみなさい
ふ:それなら得意です(うさぎ跳びをやる)
い:ホー、なかなかうまいなあ、でも、もうちょっと本物のうさぎのように、手を耳のようにして
ふ:こうですか(手を耳にして、うさぎらしく飛ぶ)
い:そうそう、そのまま五千回飛べたら採用です
ふ:飛べるかい!しかし、なんでプラスチック会社の採用試験で、うさぎになって飛ばないかんのですか?
い:今度、当社でプラスチックのうさぎ小屋を開発したんだよ
ふ:というと、私が採用されたら?
い:うさぎの気持ちになって、住み心地はどうか、小屋の中で一年間暮らしてもらいたいんだよ
ふ:よう暮らさんわそんなもん
い:駄目かね
ふ:勘弁してください
い:じゃ、息をしばらく止めてくれるかね
ふ:息をですか……ハイっ!
い:止めたかね
ふ:止めました
い:まだ吸っては駄目ですよ
ふ:どのくらい止めるんですか?
い:そうだね、百年間がんばってもらいますか
ふ:アホな!……なんで、プラスチックの会社の採用試験で、息を止めないかんのですか?
い:実は他にも当社で、プラスチック製品を新開発したんだよ、その製品の中に君に入ってもらおうと思ってね
ふ:で、私が入るプラスチックの新製品というのは?
い:百年後に取り出すタイムカプセルだよ
ふ:あかんわ!
 

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