漫才作家・中田明成

5000本の漫才台本を書いた作家、中田明成のウェブサイトです。

はな寛太・いま寛大「我家の証人喚問」

寛太(T):奈良県の山添村へ参りました
寛大(D):山添村の皆さん、私がこうして皆さんの前で漫才が出来るのも、何かの運が有ればこそです
T:運て、どういう運や?
D:……ウンやなかった。アン……イン……ウン……エン。縁があればこそです
T:……確かに縁があればこそ、こうして漫才ができるわけや
D:この縁を機会に、私から皆さんにお願いがございます
T:どんなお願いや?
D:私の家は、大阪の天王寺区にございまして
T:それがどうしたん?
D:その家へ、皆さんそれぞれが毎月千円ずつ送ってください
T:……なんで君とこの家へ、山添村の人が千円ずつ送らないかんねん?
D:大切な皆さんのお金を、決して無駄なお金には使いません
T:というと、何に使うのや?
D:我家の生活費に使います
T:なんで山添村の人が、君とこの生活費を送らないかんねん!
D:その代わり、皆さん方が大阪へ出てこられた時には、必ず私の家に泊まっていただきます
T:なるほど、そういうお返しがあったんかいな
D:食事も用意させていただきます。お風呂にも入っていただきます。暖かいお布団でも寝ていただきます
T:サービス満点やないか
D:ご希望であれば、うちの嫁はんが添い寝もさせていただきます
T:……嫁はんが添い寝するてかい!?
D:山添村の人だけに「オヤマーソイネー」て……何の反応もないやないか。そやからこのシャレ言うの嫌やったんや
T:ほな言うな!……しかし、君とこの家に泊めて食べさせて、風呂に入れてあげるというのも、縁があればこそやわな
D:そこまでしてあげて、一万円もらうだけですからね
T:金とるんかい!
D:そのお金は、決して無駄なお金には使いません
T:君とこの生活費に使うんやろ!?
D:いえ、そのお金は、国の和平の為に使わせていただきます
T:それを言うなら、国の平和やろ
D:いえ、国の和平のために使います
T:……で、その国の和平言うのは?
D:こんなこと皆さんに言うことでは無いんですが。うちの嫁はんのお父さんというのが、今、借金で苦しんでいるんです
T:嫁はんのお父さんが借金で苦しんでる事と、国の和平とどう関係あるねん?
D:嫁はんのお父さんの名前が、国野和平という名前でんねん
T:……ということは、国の和平に使うというのは、嫁はんのお父さんの借金の足しにするいうことか
D:その代わり、大阪へ来ていただいた山添村の方には、私の車に乗っていただき、大阪を案内いたします
T:なるほど、そういうサービス付きか
D:初乗りの運賃が650円、あとは80円刻みで、メーターがカチッカチッと上がります
T:タクシーと一緒やないか!……結局は金だけが目当てで、山添村の人と縁をつなごとしてる訳かい
D:でも、大阪から帰られる時には、お土産を必ず持って帰ってもらいますが、このお土産の代金は決していただきません
T:で、山添村の人に持って帰ってもらえうお土産いうのはなんや?
D:うちの家の縁の下で、野良猫が子猫を産んだんです。一匹ずつ持って帰っていただきます
T:いらんわそんなもん!……しかし、野良猫が縁の下で子供を産んだと分かった時、君とこの嫁はんは驚きよったやろねぇ?
D:驚きよったねぇ……キャッと……(会場の反応を見て)そやからこのシャレを言うの嫌や言うてるのや
T:ほな言うな!
D:あの子猫どうしたらええやろ?
T:タウン誌の「あげます」いう欄に載せてもろたらどうや
D:なるほど「かわいい子猫もらって下さい」いうてやな、そういえば、君とこの妹も、タウン誌に「もらって下さい」て出して、もろてもらたねぇ
T:うちの妹がタウン誌に「もらって下さい」てか?
D:「嫁にもらって下さい」でね……「もらっていただける方には、3か月分のエサつけます」って
T:出してるかい!
D:ここの妹を嫁にもろた先が、一年後に、タウン誌の「交換してください」に出してますねん
T:うちの妹の嫁入り先が「交換してください」の欄に何を出したんやて?
D:「中古の掃除機と冷蔵庫求めています。中古の洗濯機と嫁と交換してください」
T:アホな!嫁はんを物と交換に出す奴がどこにおるねん!
D:ところが、この私も、うちの嫁はんと何かと交換してもらえるものならしてほしいと思てまんねん
T:そういえば、最近君とこ、夫婦仲が悪いらしいなぁ
D:会場の皆さんの中で、うちの嫁はんと交換してやるいう方いませんか?何とでもよろしいで、トイレットペーパーとでもOKでっせ
T:……嫁はんにどつかれるで!……この男がこんなこと言うのも、ここの夫婦仲今、冬場のクーラーでんねん
D:なんや冬場のクーラーて
T:冷えきってまんねん
D:君にそこまで言われたないわ。それを言うならせめて、うちの夫婦仲は両足の付け根辺りやと言うてほしいわ
T:両足の付け根辺り言うと?
D:別れるちょっと手前や
T:余計悪いやないか!……そういえば、最近君とこは、夫婦喧嘩も多いらしいな
D:夫婦喧嘩はしますけど、殴ったり蹴ったりはありませんよ。あくまでも、口だけでも喧嘩ですから
T:口だけいうと?
D:嚙みつき合いだけですよ
T:言い合いだけと違うんかい!
D:昨日も、嫁はんの奴が派手なピンクの服着て「どう、これ私に似合うかしら」なんて言いよったから「アホか!そんなもん似合うかい。年を考え!」言うたった
T:ほな嫁はんどう言いよった?
D:「あんたかて、その服、全然似合うかいアホ!」
T:しょうもないことで貶しあうな。猫の喧嘩を見習うてみい。猫はたとえ喧嘩をしても誉めおうてるやろ
D:猫が喧嘩しても誉めおうてる?
T:ニャーーウ!(似合う)ニャーーウ!
D:あれは誉めてるのと違ごて鳴き声や!
T:ニワトリの喧嘩かてそうやぞ
D:ニワトリの喧嘩いうと?
T:ケッコウ!(結構)……ケッコウなコッチャ!
D:……ニワトリが、ケッコウなコッチャなんて鳴くか?
T:君も芸能人のはしくれやねん。例え夫婦喧嘩はしても、もうちょっと品よくやれ。品を持て。
D:馬の喧嘩を見習えいうことかい
T:馬の喧嘩?
D:ヒヒーン!ヒン!
T:アホな!
D:この前なんか嫁はんの奴、私に「このド甲斐性なし!」なんて言いよってな
T:きついこと言いよるなあ
D:私も「このノロマ!」て言い返してやったがな
T:その喧嘩はあかんわ。例え喧嘩はしても、言ってはいけない言葉があるねん。それは、相手の欠点をズバリ突く言葉や
D:相手の欠点をズバリ突く言葉?
T:そう、その言葉だけは、夫婦喧嘩では言ってはいけない。うちの夫婦喧嘩でも、その言葉だけはお互い絶対言わんからね
D:ほな君は夫婦喧嘩しても、絶対嫁はんには「大阪一のブサイク!」て言わへんわけやな?
T:大阪一のブサイク?
D:欠点をズバリ突いてるがな
T:……あのな
D:君は嫁はんに「ビア樽女」とは言わん奴や?「おたやん、こけても、鼻打たん~」とは言わん奴や?
T:……それは余りにも、うちの嫁はんに失礼と違うか?
D:嫁はんも君のことを絶対に「笑わすのが下手な漫才師」とは言わん奴や?
T:やかましいわ!うちの夫婦のことはええねん。それより、君とこの夫婦がそこまで仲が悪なったもともとの原因はなんやねん?
D:嫁はんのヤキモチや。私が浮気をしてると疑い始めてから、夫婦仲がおかしなってきたんや
T:君はやましいことはしてないか?
D:言うとくけど、私は生まれてこの方、浮気と仕事中のあくびだけは一回もしたこと無いねん。それが私の信念や
T:そこまで言うのなら、君を信じよやないか
D:(大あくびをする)ア~ア~、昨日徹夜マージャンして眠いわ
T:アクビしとるやないか!
D:私がほんまに浮気をしてないかどうか、私を証人喚問にかけたいと嫁はんは言いよんねや
T:証人喚問に?君にやましい事が無いのならかけてもらわんかい。それとも、証人喚問が怖いんか?
D:怖いことあるかい。いつでも喚問を受けて立つがな、そやから嫁はんに言うてやったがな
T:何を言うたん?
D:ヘイ!カンモン!……(会場の反応を見て)そやからこのシャレ言うのいややったんや
T:ほな言うな!……よっしゃ、君が嫁はんの証人喚問を受けて立つというのなら、私が進行役の議長を務めよやないか
D:よろしくお願いします(以降、国会の証人喚問風に)
T:これより、浮気疑惑における証人喚問を執り行います。証人前へ
D:ハイ!(一歩前へ)
T:まず、証人の名前を申し述べてください
D:……田村正和です
T:誰がや!
D:いま寛大です
T:犯人は質問には正直に答えてください。もし嘘をつかれますと、打ち首獄門となります
D:重いなぁ!
T:では寛大氏の奥さん。質問をしてください(お婆さんで)ハイハイ、それでは質問させてもらいましょうかねぇ(腰を曲げて杖をつく)
D:うちの嫁はんはおばんか!
T:(嫁で)あなたにお尋ねします。確かあなたは三日前の晩、家へ帰るのが大変遅かったわね
D:三日前の番ですか
T:そうです
D:……ちょっと待ってね(考える仕草)確かに遅く帰りました
T:なぜ、あんなに遅くなったのか、その訳を言いなさい!
D:……ちょっと待ってね(考える仕草)あの夜は確か、コンビの寛太君と二人で、漫才の新ネタを稽古していたので遅くなったわけです
T:嘘を言っては駄目です!あの日の夜は、寛太さんはパソコン教室に行かれていた。という奥さんの証言があるんです
D:……あいつ、パソコンなんか習ろとったんか
T:片方はパソコンの勉強。片方は浮気。コンビで違いすぎるわよ
D:なんで寛太君がパソコン教室に通いだしたか、あんた知ってるんか
T:なんでやいうの?
D:あの教室の女の先生とできとんねん
T:アホな!……そういういい加減なことを言うてるから、家族全員から馬鹿にされるんですよ、息子や娘たちは、あなたのことをどう言ってるか知ってるんですか?
D:疑惑のデパートやと言うてる言いたいのやろ
T:あんたは、デパートのようにスケールが大きないのよ
D:ほな、疑惑の総合商社かい?
T:そんな大きない
D:ほなどういういうてる言うねん?
T:疑惑の屋台のおでん屋
D:……スケールが小さいなぁ!
T:あの夜、あなたは女性と腕を組んで歩いていた覚えがあるでしょ、思い出してみなさい
D:……ちょっと待ってね……私には覚えはございません
T:ごまかしても無駄です。あなたが黒いドレスの女と歩いてるところを見た。という証人もいるんですよ
D:それは他人の空似でしょう。私の顔や髪型は、どこにでもいるタイプやねん
T:……こんなジジムサイのどこにでもおらへんわ!
D:思い出しました。その女性というのは、寛太君の彼女やがな。寛太君に頼まれて、彼女を駅まで送ったんですよ
T:ええ加減なことを言うて……ほな、あんたのポケットから出てきたホテルのマッチはなんですか?
D:マッチ?
T:説明をしてもらいましょ
D:……ちょっとマッチね……(会場の反応を見て)そやからこのシャレ言うの嫌や言うてたんや
T:ほな言うな!
D:マッチの出どころを思い出した
T:その出どころというのは?
D:寛太君にもろたんです
T:(寛太本人に戻り)待てー!さっきから聞いてたら、自分の浮気をみな私にすりつけとるやないかい
D:コンビですから、助け合おや
T:そのええ加減な言葉が、うちの嫁はんに伝わって、うちの嫁はんが私を疑いだしたらどないしてくれるねん!
D:その時は、君を証人喚問にかけよやないか
T:もうええわ!

 

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